インフルエンザと新型コロナをほとんど見なくなり、季節性のかぜの流行も中規模にとどまり、外来診療は落ち着いています。しかし、麻疹の感染者が増えているという気がかりなニュースがあります。麻疹は非常に重い病気です。医療が進んだ国でも死亡率は0.1%(1000人に1人)です。特効薬はありません。ワクチン接種が麻疹を抑える唯一の手段です。1歳の誕生日を迎えたらできるだけ早くワクチン接種を済ませましょう。幼稚園・保育園の年長児はできるだけ早く2回目のワクチン接種を済ませましょう。なお、麻疹を診療する際は特殊な隔離が必要ですので、医療機関を受診する前に必ず電話でご連絡ください。
・急性上気道炎(かぜ)が小流行しています。咳と鼻水が特徴です。短期間の発熱を伴うことがあります。
・溶連菌による急性咽頭炎が幼児・学童の間で散見されます。発熱と咽頭痛と発疹(紅斑)が特徴です。嘔気・嘔吐を伴うこともあります。
・アデノウイルスによる急性上気道炎が乳幼児の間で散見されます。長引く発熱が特徴です。
・伝染性紅斑(リンゴ病)が見られるようになりました。今後、流行する可能性があります。
・胃腸炎が小流行しています。嘔吐、腹痛、発熱で始まり、下痢に移行することが多いです。ノロウイルスが主な原因と思われます。
・インフルエンザの流行は収束しました。神奈川県における定点医療機関での1週間の感染者数は1.02人です。当院でも3月後半からほぼ見なくなりました。新型コロナウイルスの出現から3年たった後、本来の流行パターン(冬季の大規模な発生)に戻ったようです。
・新型コロナウイルス感染症の発生は減少しています。神奈川県における定点医療機関での1週間の感染者数は1.61人です。小児の間で流行はありませんが、成人(家族)からの感染例が稀に見られます。主症状は、発熱、咽頭痛、咳、鼻水です。重症化するケースは高齢者も含めて少なくなりました。急性期の症状は普通のかぜと同様ですが、稀に後遺症(味覚障害、嗅覚障害、長引く咳、倦怠感など)を生じる点が、普通のかぜと異なります。小児において感染の2〜6週後、川崎病に類似した「小児多系統炎症性症候群(MIS-C)」が稀に生じる点も、普通のかぜと異なります。警戒はやはり必要です。
・マイコプラズマは昨年後半、8年ぶりの大きな流行がありました。今年に入り流行はおおよそ収束しましたが、まだ少し見られます。マイコプラズマ感染症は、風邪と同じ症状(発熱、倦怠感など)で始まりますが、熱が長引いたり数日後から激しい乾いた咳が現れたりすることが特徴で、肺炎に進行するケースも少なからずあります。
・RSウイルス、ヒトメタニューモウイルス(急性細気管支炎の原因となるウイルス)が乳幼児の間で散見されます。強い咳き込みと喘鳴が特徴です。肺炎に進行するケースもあります。呼吸が苦しそうなときは早めにご受診ください。ヒトメタニューモウイルスの詳細は「院長のコラム」(本年1月)をご参照ください。
・水痘(水ぼうそう)が大和市内の保育園、小学校で流行しています。当院で4月前半に9名を数えました。ワクチン2回接種済みでも罹ることがありますが、その場合の症状は比較的軽度です。
・おたふくかぜの流行はありません。
・麻疹は今年、全国で66名(神奈川県で8名)の報告があります。風疹は今年、全国で5名(神奈川県でゼロ)の報告があります。麻疹が3月以降、都市部を中心に急増しています。昨年1年間の45人を早くも超えました。麻疹は1000人に1人が死亡する重篤な病気です。麻疹の詳細は「院長のコラム」(2025年4月)をご参照ください。また、妊婦が風疹に罹ると、赤ちゃんに先天性風疹症候群を生じる危険があります。2000年以降、70名の報告があります。麻疹と風疹の流行を止める唯一の手段はワクチン接種です。自身の健康を守るために、そして社会に麻疹と風疹を蔓延させないために、1歳と就学1年前(5〜6歳)の計2回、麻疹・風疹(MR)ワクチンを接種しましょう。なおワクチン不足の事態を受けて、現在2歳の方(2022年4月2日〜2023年4月1日生まれ)と今年小学校に入る方(2018年4月2日〜2019年4月1日生まれ)につきまして、接種期間が2027年3月31日まで延長されます。
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