2025年6月28日土曜日

感染症情報(2025年6月後半)

季節性のかぜが流行しています。保育園に入って間もない乳幼児が繰り返し感染するケースが多いです。ただし重症患者を診る機会は少なく、外来診療は比較的落ち着いています。6月前半にインフルエンザが一部の保育園と小学校で流行しましたが、6月後半には収束しました。現在、流行の情報は入っていません。

全国で麻疹の感染者が増えています。とくに6月に入ってから、神奈川県での報告が急増しています(隣接する藤沢市で610日、2名の報告がありました。その後、623日時点で8例目の患者が報告されています)。主な年齢層は2030歳代ですが、乳幼児の感染も報告されています。麻疹は非常に重い病気です。医療が進んだ国でも死亡率は0.1%(1000人に1人)です。特効薬はありません。ワクチン接種が麻疹を抑える唯一の手段です。1歳の誕生日を迎えたらできるだけ早くワクチン接種を済ませましょう。幼稚園・保育園の年長児はできるだけ早く2回目のワクチン接種を済ませましょう。なお、麻疹を診療する際は特殊な隔離が必要ですので、医療機関を受診する前に必ず電話でご連絡ください

・急性上気道炎(かぜ)が小流行しています。咳と鼻水が特徴です。短期間の発熱を伴うことがあります。

・溶連菌による急性咽頭炎が幼児・学童の間で増えています。発熱と咽頭痛と発疹(紅斑)が特徴です。嘔気・嘔吐を伴うこともあります。

・アデノウイルスによる急性上気道炎が乳幼児の間で散見されます。長引く発熱が特徴です。眼脂(目やに)を伴うことがあります。

・伝染性紅斑(リンゴ病)が散発しています。現時点で大きな流行にはつながっていません。

・ヘルパンギーナと手足口病(いずれもエンテロウイルスによる夏かぜの一種)が徐々に増えています。ヘルパンギーナは高熱と口内痛(口内炎)が特徴です。手足口病はこれに加えて上下肢の発疹が特徴です。

・胃腸炎が散見されますが、大きな流行はありません。

・インフルエンザの流行はありません。

・新型コロナウイルス感染症の流行はありません。神奈川県における定点医療機関での1週間の感染者数は1.04人です。小児の間での流行はありませんが、成人からの感染例が稀にありますので、ご両親(のいずれか)が発熱しているときはご注意ください。主症状は、発熱、咽頭痛、咳、鼻水です。重症化するケースは高齢者も含めて少なくなりました。急性期の症状は普通のかぜと同様ですが、稀に後遺症(味覚障害、嗅覚障害、長引く咳、倦怠感など)を生じる点が、普通のかぜと異なります。小児において感染の26週後、川崎病に類似した「小児多系統炎症性症候群(MIS-C)」が稀に生じる点も、普通のかぜと異なります。警戒はやはり必要です。

・マイコプラズマは昨年後半、8年ぶりの大きな流行がありました。今年に入り流行はほぼ収束しました。マイコプラズマ感染症は、風邪と同じ症状(発熱、倦怠感など)で始まりますが、熱が長引いたり数日後から激しい乾いた咳が現れたりすることが特徴で、肺炎に進行するケースも少なからずあります。

・百日咳が例年以上のペースで増えています。6月下旬での累計患者数は31,966名で、昨年1年間の患者総数の8倍弱に達しています。百日咳は、風邪と同じ症状(発熱、咳など)で始まりますが、熱が治まった後も咳が長く続きます。短い咳がコンコンコンコンと連続的に生じ、咳の終わりにヒューッと音を立てて息を吸い込む「発作性」の咳が特徴です。ただし成人が百日咳を発症しても症状は一般に軽く、普通の風邪と見分けることは困難です。百日咳ワクチン未接種の乳児がかかると重症化しやすく、命に危険が及ぶこともあります。百日咳の詳細は「院長のコラム」(20254月)をご参照ください。

・RSウイルス、ヒトメタニューモウイルス(急性細気管支炎の原因となるウイルス)が乳幼児の間で散見されます。強い咳き込みと喘鳴が特徴です。肺炎に進行するケースもあります。呼吸が苦しそうなときは早めにご受診ください。ヒトメタニューモウイルスの詳細は「院長のコラム」(20251月)をご参照ください。

・水痘(水ぼうそう)の流行はほぼ収束しました。6月下旬、新たな発生は見られませんでした。

・おたふくかぜの流行はありません。

・麻疹は今年、全国で142名(神奈川県で16名)の報告があります。風疹は今年、全国で6名(神奈川県でゼロ)の報告があります。麻疹が3月以来、都市部を中心に急増しています。昨年1年間の45人をすでに大きく超えました。特に6月に入り神奈川県での報告が急増しています。隣接する藤沢市で2名の報告が610日に出されました(うち1名はワクチンを接種していない10歳未満児でした)。その後、627日時点で8例目の患者が報告されています。麻疹は1000人に1人が死亡する重篤な病気です。麻疹の詳細は「院長のコラム」(20254月)をご参照ください。また、妊婦が風疹に罹ると、赤ちゃんに先天性風疹症候群を生じる危険があります。2000年以降、70名の報告があります。麻疹と風疹の流行を止める唯一の手段はワクチン接種です。自身の健康を守るために、そして社会に麻疹と風疹を蔓延させないために、1歳と就学1年前(56歳)の計2回、麻疹・風疹(MR)ワクチンを接種しましょう。なおワクチン不足の事態を受けて、現在2歳の方(202242日〜202341日生まれ)と今年小学校に入る方(201842日〜201941日生まれ)につきまして、接種期間が2027331日まで延長されます。

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