2011年8月26日金曜日

子宮頸がん予防ワクチンが二種類に増えました

 子宮頸がん予防ワクチンは、従来のサーバリックスの他にガーダシルが新たに加わりました。どちらにもすぐれた子宮頸がん予防効果があります。両者の効果を直接比較したデータはありません。ガーダシルには尖圭コンジローマを予防する成分も含まれています。

 どちらのワクチンも公費助成の対象です(ガーダシルは9月15日から開始)。ワクチンの選択について、ご相談に応じます。ただしガーダシルの供給量が十分でないため、当面はサーバリックスを主に接種する予定です。

 サーバリックスとガーダシルは、いずれも同じワクチンを三回続けて接種する決まりになっています。ワクチンを途中で変えることはできませんので、ご注意ください。


 なお、子宮頸がん予防ワクチンの公費助成の対象は、中学一年から高校一年相当の女子です。今年度中(平成24年3月31日まで)に接種を完了できるように、計画をお立てください。平成23年9月30日までに1回目を接種しないと、今年度中に計3回の接種を完了することができません。来年4月以降の接種は公費助成を受けられず自己負担になりますのでご注意ください。

 今年度は高校二年相当の女子も特例として公費助成の対象になります。ただし、平成23年9月30日までに1回目を接種した場合のみ、2回目以降も助成の対象になります。10月1日以降に1回目を接種した場合は、公費助成を受けられませんのでご注意ください。

 なるべく早めの(9月30日までの)予約をお勧めいたします。


【追記(9月3日)】

2011年9月15日から、サーバリックス、ガーダシルの両ワクチンが、公費助成の対象になります。どちらを選んでいただくか、少々悩ましい問題が生じました。

 サーバリックスは、子宮頸癌の原因になる高リスク型(16、18型)のヒトパピローマウイルスを予防します。ガーダシルは、高リスク型(16、18型)に加えて、尖圭コンジローマ(性器いぼ)など性感染症の原因になる低リスク型(6、11型)のヒトパピローマウイルスも予防します。

 単純に比較しますと、低リスク型(6、11型)の予防効果も併せ持つガーダシルの方が優れているように見えます。しかし高リスク型(16、18型)に対する予防効果について、サーバリックスの方が免疫抗体価の上昇が良いこと(ガーダシルの2~9倍)、他の高リスク型(31、45型)に対する交差反応が良いこと、免疫抗体価の持続期間が長いこと(ガーダシルの2倍以上)など、サーバリックスの方に軍配が上がるようです。子宮頸癌の予防に特化すれば、サーバリックスの方が優れているように見えます。ただしこれは米国の臨床データであり、日本では両者の直接比較研究は行われていません。

 以上から、サーバリックス、ガーダシルには一長一短の性質があり、どちらが優れているとは一概に決められません。どちらも優れたワクチンであるというのが結論です。皆様のご希望に添ったワクチンを接種いたします。ただし、ガーダシルの発売当初は供給量が十分ではありませんので、サーバリックスをお勧めする場合もあります。ご了承ください。

2011年8月10日水曜日

日本脳炎ワクチンの対象年齢の拡大

 日本脳炎ワクチンの本来の対象年齢は、第一期が3歳以上 7歳6ヶ月未満(1~4週間隔で2回、その1年後に1回。計3回)、第二期が9歳以上 13歳未満(1回)です。しかし、平成17年から21年までの間、接種が十分には勧められていなかったため、接種機会を逃した方が大勢いらっしゃいます。

 平成22年8月、「第一期を計3回済ませていない人は、9歳以上 13歳未満の年齢で、残り分を定期接種できる」「第一期を終えた後、9歳以上 13歳未満の年齢で、第二期を定期接種できる」とする特例が、厚生労働省から発令されました。
 平成23年5月、「対象年齢を7歳6ヶ月以上 9歳未満、13歳以上 20歳未満に拡大する」とする特例も発令されました。

 特例の対象者は、平成7年6月1日~平成19年4月1日生まれ(平成23年6月30日時点で4歳2ヶ月~16歳0ヶ月)の人です。現在16歳1ヶ月以上の方は対象外ですのでご注意ください。

 第一期と第二期を合わせて計4回の接種が済んでいない方は、20歳までの間に残り分を定期接種できます。1回目と2回目は1~4週間隔、3回目は約1年後、4回目は約5年後です。ただし4回目を5年間待つと20歳を越えてしまう場合、もっと短い間隔で(最低1週間)接種することもできます。

 なお、通知が直ちに届かない年齢層もあります。詳細は居住地の市役所にお問い合わせください。

(6月29日 掲載、8月10日 改訂版)

2011年6月26日日曜日

ヒブ・小児用肺炎球菌ワクチン(再掲)

 ヒブワクチン(アクトヒブ)と小児用肺炎球菌ワクチン(プレベナー)の接種後に乳幼児の死亡例が相次いだことを受けて、厚生労働省は専門家会議を招集して十分な検討を行い、 (1) 両ワクチンの接種と死亡について「明確な因果関係は認められない」、(2) 同時接種について「安全上の懸念はない」と結論しました。

 ワクチン接種後に報告される有害事象は、”真の副作用”と”紛れ込み事象”の両方を含みます。乳幼児では、乳幼児突然死症候群(SIDS)、急性感染症、先天異常などの重篤な疾患が”紛れ込む”可能性があります。米国ではすでに大々的な調査が完了し、ワクチン関連の死亡は皆無(すべて紛れ込み)と結論されています。今回、日本において有害事象が多く報告された背景には、(1) 公費助成制度により被接種者が急増したこと(紛れ込みも多くなる)、(2) 公費助成制度において、因果関係が明らかでなくても、有害事象を全例報告する方式に変わったこと(やはり紛れ込みが多くなる)、の二点があります。

 当クリニックにおきましては、科学的検証の正当性、諸外国における過去の実績(安全性と有効性)を考慮し、両ワクチンの同時接種を積極的に進めてまいります。

 なお、乳幼児突然死症候群(SIDS)は院長のコラムをご参照ください。

2011年6月8日水曜日

ワクチンの同時接種

 ワクチンの同時接種は、諸外国では普通に行われている手技ですが、日本ではまだ馴染みが薄いせいか、効果と安全性についてのご質問をしばしばお受けします。結論を申しますと、ワクチンの同時接種は子どもたちを病気から守るために必要な医療行為です。以下、日本小児科学会が発表した声明文を一部引用します。

 同時接種について現在分かっていること : (1) 各ワクチンの有効性は低下しない、(2) 各ワクチンの有害事象・副反応の頻度は上昇しない、(3) 同時接種できるワクチンの本数に制限はない

 同時接種の利点 : (1) 各ワクチンの接種率が向上する、(2) 子どもたちがワクチンで予防される疾患から早期に守られる、(3) 保護者の時間的負担が軽減される

 当院は同時接種を積極的に採用しています。ただし、同時接種を希望されない方には日をあけて別個に接種いたします。

2011年3月12日土曜日

当院は子どもが成人するまで見守ります

 「いつまで診てもらえますか」「小児科って何歳までですか」

 しばしばお尋ねいただく質問です。当クリニックは、子どもの心身がぐんぐん伸びて成人に達する二十歳までが小児科の守備範囲と考えています。高校生になってもどうぞご遠慮なく、ご相談においでください。