幼稚園と学校の新学期が始まり、朝夕涼しくなり、通常の(季節性の)かぜが再び増えてきました。発熱する小児も少なからず見られます。かぜの中に新型コロナウイルス感染症がたまに紛れ込んでいます。8月までは親から子に感染するケースが時折あるだけでしたが、9月に入ってから市内数ヶ所の保育園・幼稚園や学校での集団発生が報告されています。流行情報にご注意ください。
全国で麻疹の感染者が増えています。主な年齢層は20〜30歳代ですが、乳幼児の感染も報告されています。麻疹は非常に重い病気です。医療が進んだ国でも死亡率は0.1%(1000人に1人)です。特効薬はありません。ワクチン接種が麻疹を抑える唯一の手段です。1歳の誕生日を迎えたらできるだけ早くワクチン接種を済ませましょう。幼稚園・保育園の年長児はできるだけ早く2回目のワクチン接種を済ませましょう。なお、麻疹を診療する際は特殊な隔離が必要ですので、医療機関を受診する前に必ず電話でご連絡ください。
・急性上気道炎(かぜ)が増えています。主な症状は咳と鼻水で、短期間の発熱を伴うことがあります。
・溶連菌による急性咽頭炎が幼稚園・学校で増えています。発熱と咽頭痛と発疹(紅斑)が特徴です。嘔気・嘔吐を伴うこともあります。
・アデノウイルスによる急性上気道炎が乳幼児の間で散見されます。長引く発熱が特徴です。発熱は1日の中での変動が大きく、午前に低く午後に高くなります。眼脂(目やに)を伴うことがあります。
・ヘルパンギーナ、手足口病(エンテロウイルス属による夏かぜの一種)の流行はありません。
・胃腸炎が全年齢層で散見されます。嘔吐、発熱、腹痛、下痢が特徴です。
・インフルエンザの流行はありません。神奈川県における定点医療機関での1週間の感染者数は0.71人です。深見小学校5年で9月中旬に学級閉鎖がありましたが、一過性の流行で終わりました。
・新型コロナウイルス感染症は増減を繰り返して横ばい傾向です。神奈川県における定点医療機関での1週間の感染者数は5.62人です(2週間前は6.67人でした)。8月までは親から子に感染するケースがたまに見られるだけでしたが、9月に入ってから市内数ヶ所の保育園・幼稚園や学校での集団発生が報告されています。市域全体に拡がる兆候はありませんが、今後の情報にご注意ください。主症状は、発熱、咽頭痛、咳、倦怠感です。現在の流行株の特徴は「激しい咽頭痛」です。重症化するケースは高齢者も含めて少なくなりました。急性期の症状は普通のかぜと同様ですが、稀に後遺症(味覚障害、嗅覚障害、長引く咳、倦怠感など)を生じる点が、普通のかぜと異なります。小児において感染の2〜6週後、川崎病に類似した「小児多系統炎症性症候群(MIS-C)」が稀に生じる点も、普通のかぜと異なります。警戒はやはり必要です。
・マイコプラズマは昨年後半、8年ぶりの大きな流行がありました。今年後半も昨年と同様に増加傾向です(9月に入り急増しています)。マイコプラズマ感染症は、風邪と同じ症状(発熱、倦怠感など)で始まりますが、熱が長引いたり数日後から激しい乾いた咳が現れたりすることが特徴で、肺炎に進行するケースも少なからずあります。
・百日咳が10代以下の小児の間で流行しています。9月20日までの累計患者数は43728名です。現在の集計方法となった2018年以降で最大の数値です(過去の最高は2019年の16845名でした。ちなみに昨年の累計数は4096名でした)。なお、9月前半の報告数に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。1週間あたりの患者数は7月中旬にピーク(3908名)に達した後、徐々に減少しています(直近は1552名)。百日咳は、風邪と同じ症状(発熱、咳など)で始まりますが、熱が治まった後も咳が長く続きます。短い咳がコンコンコンコンと連続的に生じ、咳の終わりにヒューッと音を立てて息を吸い込む「発作性」の咳が特徴です。ただし成人が百日咳を発症しても症状は一般に軽く、普通の風邪と見分けることは困難です。百日咳ワクチン未接種の乳児がかかると重症化しやすく、肺炎や脳症を併発して死亡することもあります。耐性菌に感染する例も報告されています。生後2ヶ月を迎えたら速やかにワクチンを接種しましょう。百日咳の詳細は「院長のコラム」(2025年4月)をご参照ください。
・RSウイルスによる急性細気管支炎が乳幼児の間で散見されます。強い咳き込みと喘鳴が特徴です。肺炎に進行するケースもあります。呼吸が苦しそうなときは早めにご受診ください。
・水痘(水ぼうそう)、おたふくかぜの流行はありません。
・麻疹は今年、全国で228名(神奈川県は40名で最多)の報告があります。風疹は今年、全国で10名(神奈川県で1名)の報告があります。麻疹が3月以来、都市部を中心に急増しています(8月以降、増加速度はやや鈍っています)。昨年1年間の45人をすでに大きく超えました。7月に隣接する藤沢市で感染者が8人出る騒ぎがありましたが、大和市への波及はないまま終息しました。麻疹は1000人に1人が死亡する重篤な病気です。麻疹の詳細は「院長のコラム」(2025年4月)をご参照ください。また、妊婦が風疹に罹ると、赤ちゃんに先天性風疹症候群を生じる危険があります。2000年以降、70名の報告があります。麻疹と風疹の流行を止める唯一の手段はワクチン接種です。自身の健康を守るために、そして社会に麻疹と風疹を蔓延させないために、1歳と就学1年前(5〜6歳)の計2回、麻疹・風疹(MR)ワクチンを接種しましょう。なおワクチン不足の事態を受けて、現在2歳の方(2022年4月2日〜2023年4月1日生まれ)と今年小学校に入る方(2018年4月2日〜2019年4月1日生まれ)につきまして、接種期間が2027年3月31日まで延長されます。
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