インフルエンザの流行のピークは過ぎました。神奈川県の1医療機関(定点)で1週間に26.27人のペースです(2週間前は45.66人でした)。流行中のウイルスはA/H3N2(A香港型)です。A/H1N1(A09型、いわゆる新型)とB型もわずかに見られます。年末年始の人の移動により流行が再燃する可能性がありますので、感染予防と拡大防止のために手洗いと咳エチケットを引き続き行いましょう。
麻疹の全国的な拡大は止まりました。感染者の主な年齢層は20〜30歳代ですが、乳幼児の感染も報告されています。麻疹は非常に重い病気です。医療が進んだ国でも死亡率は0.1%(1000人に1人)です。特効薬はありません。ワクチン接種が麻疹を抑える唯一の手段です。1歳の誕生日を迎えたらできるだけ早くワクチン接種を済ませましょう。幼稚園・保育園の年長児はできるだけ早く2回目のワクチン接種を済ませましょう。なお、麻疹を診療する際は特殊な隔離が必要ですので、医療機関を受診する前に必ず電話でご連絡ください。
・急性上気道炎(かぜ)が流行しています。主な症状は咳と鼻水で、短期間の発熱を伴うことがあります。
・溶連菌による急性咽頭炎が流行しています。年中見られますが、寒い季節に増えます。主な症状は発熱と咽頭痛で、発疹(紅斑)を伴うことがあります。
・ノロウイルス等による胃腸炎が年末から急に増えてきました。幅広い年齢層で見られます。主な症状は嘔吐、発熱、腹痛、下痢です。
・インフルエンザの流行のピークは過ぎましたが、保育園・幼稚園から小中高校まで、幅広い年齢層でまだ見られます。神奈川県の定点医療機関での1週間の感染者数は26.27人です。現在の流行の中心はA/H3N2(A香港型)です。従来のJ系統からK系統に変異したことが、大きな流行を招いた要因と考えられています。詳細は「院長のコラム(2025年11月)」をご参照ください。
・新型コロナウイルス感染症の流行はありません。小児集団での発生は報告されていません。神奈川県における定点医療機関での1週間の感染者数は0.76人です。主症状は、発熱、咽頭痛、咳、倦怠感です。重症化するケースは高齢者も含めて少なくなりました。急性期の症状は普通のかぜと同様ですが、稀に後遺症(味覚障害、嗅覚障害、長引く咳、倦怠感など)を生じる点が、普通のかぜと異なります。小児において感染の2〜6週後、川崎病に類似した「小児多系統炎症性症候群(MIS-C)」が稀に生じる点も、普通のかぜと異なります。警戒はやはり必要です。
・マイコプラズマは昨年後半、8年ぶりの大きな流行がありました。今年も昨年と同様、9月以降に著しく増加しています。マイコプラズマ感染症は、風邪と同じ症状(発熱、倦怠感など)で始まりますが、熱が長引いたり数日後から激しい乾いた咳が現れたりすることが特徴です。肺炎に進行するケースも少なからずあります。
・百日咳が10代以下の小児の間で流行しています。風邪と同じ症状(発熱、咳など)で始まりますが、熱が治まった後も咳が長く続きます。短い咳がコンコンコンコンと連続的に生じ、咳の終わりにヒューッと音を立てて息を吸い込む「発作性」の咳が特徴です。ただし成人が百日咳を発症しても症状は一般に軽く、普通の風邪と見分けることは困難です。百日咳ワクチン未接種の乳児がかかると重症化しやすく、肺炎や脳症を併発して死亡することもあります。耐性菌に感染する例も報告されています。生後2ヶ月を迎えたら速やかにワクチンを接種しましょう。百日咳の詳細は「院長のコラム」(2025年4月)をご参照ください。
・RSウイルス、ヒトメタニューモウイルスの流行はおおむね収束しました。妊婦向けRSウイルスワクチン(アブリスポ)が2026年4月から国の定期接種になる見通しです。生まれてくる赤ちゃんをRSウイルスによる重い呼吸器感染症(細気管支炎や肺炎)から守る「母子免疫ワクチン」です。ワクチン接種により母親の体内でRSウイルスに対する免疫抗体が作られ、それが胎盤を通して赤ちゃんに移行することで効果を発揮します。現在も任意接種で使用できます。妊娠24週から接種できますが、28〜36週が望ましいとされています。
・水痘(水ぼうそう)が散見されます。おたふくかぜの流行はありません。
・麻疹は今年、全国で261名(神奈川県は41名で最多)の報告があります。風疹は今年、全国で11名(神奈川県で1名)の報告があります。麻疹は3月から都市部を中心に急増していましたが、9月から増加に歯止めがかかりました。麻疹は1000人に1人が死亡する重篤な病気です。麻疹の詳細は「院長のコラム」(2025年4月)をご参照ください。また、妊婦が風疹に罹ると、赤ちゃんに先天性風疹症候群を生じる危険があります。2000年以降、70名の報告があります。麻疹と風疹の流行を止める唯一の手段はワクチン接種です。自身の健康を守るために、そして社会に麻疹と風疹を蔓延させないために、1歳と就学1年前(5〜6歳)の計2回、麻疹・風疹(MR)ワクチンを接種しましょう。なおワクチン不足の事態を受けて、現在2歳の方(2022年4月2日〜2023年4月1日生まれ)と今年小学校に入る方(2018年4月2日〜2019年4月1日生まれ)につきまして、接種期間が2027年3月31日まで延長されます。
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