今月から玉井直敬が感染症情報を担当いたします。
春休みが明けて集団生活が戻ってきたタイミングに一致して急性上気道炎(かぜ)、胃腸炎が増えてきています。とくに保育園、幼稚園での流行が顕著です。免疫能が未発達の乳幼児は、ウイルスや細菌への抵抗力が十分に備わっていません。かぜ症状が現れたら、早めにご相談ください。
麻疹の今年の累計が5月8日時点で462名に達しました。昨年同時期は100名強であり、流行の強さが伺えます。麻疹脳炎の罹患リスクが高いとされる2歳未満の患者さんもすでに11名診断されており、非常に憂慮される状況です。東京都では一つの小学校で47名もの感染者数が報告されました。インフルエンザや新型コロナの10倍と言われている麻疹の感染力の強さを思い知ります。感染拡大を防ぐために最も大切なことは、小児は2回のMRワクチン定期接種を確実に受けることです。さらに、免疫が足りないと考えられる世代(2回接種していない20代後半から50代)は、海外に渡航したり訪日外国人に接したりする時、MRワクチンの接種が推奨されます。なお、麻疹を診療する際は特殊な隔離が必要ですので、麻疹が疑われる場合、医療機関を受診する前に必ず電話でご連絡ください。
・急性上気道炎(かぜ)が増えてきました。主症状は咳と鼻水で、ときに発熱を伴います。
・RSウイルス・ヒトメタニューモウイルスによる急性細気管支炎が乳幼児の間で散発されます。強い咳き込みと喘鳴が特徴です。息が苦しそうなときは、早めにご受診ください。ヒトメタニューモウイルスの詳細は「院長のコラム」(2025年1月)をご参照ください。妊婦向けRSウイルスワクチン(アブリスポ)が2026年4月から国の定期接種となっています。生まれてくる赤ちゃんをRSウイルスによる重い呼吸器感染症(細気管支炎や肺炎)から守る「母子免疫ワクチン」です。ワクチン接種により母親の体内でRSウイルスに対する免疫抗体が作られ、それが胎盤を通して赤ちゃんに移行することで効果を発揮します。現在も任意接種で使用できます。妊娠24週から接種できますが、28〜36週が望ましいとされています。
・溶連菌による急性咽頭炎が増えています。発熱と咽頭痛と発疹(紅斑)が特徴です。消化器症状(腹痛、嘔吐、下痢)を伴うこともあります。
・胃腸炎の流行は下火になりましたが、まだ続いています。嘔吐、発熱、下痢、腹痛が特徴です。
・水痘(水ぼうそう)が大和市内の保育園、小学校で流行しています。ワクチン2回接種済みでも罹ることがあります(症状は一般に軽度です)。
・新型コロナウイルス・インフルエンザの流行はありません。神奈川県の定点医療機関での1週間の感染者数はそれぞれ0.23人、0.09人です。当院での5月の感染者数はゼロです。
・おたふくかぜ・伝染性紅斑(リンゴ病)の流行はありません。暖かい気候となってきましたが、まだ手足口病やヘルパンギーナ手足口病やヘルパンギーナはみられません。
・麻疹の患者数が増えています。今年は全国で462名(神奈川県で43名)です。神奈川県でも若年発症者の情報があります。最新情報にご留意ください。
・百日咳が散見されます。大流行だった昨年よりは少ないですが、引き続き注意が必要です。風邪と同じ症状(発熱、咳など)で始まりますが、熱が治まった後も咳が長く続きます。短い咳がコンコンコンコンと連続的に生じ、咳の終わりにヒューッと音を立てて息を吸い込む「発作性」の咳が特徴です。ただし成人が百日咳を発症しても症状は一般に軽く、普通の風邪と見分けることは困難です。百日咳ワクチン未接種の乳児がかかると重症化しやすく、肺炎や脳症を併発して死亡することもあります。耐性菌に感染する例も報告されています。昨年1年間で7名の乳児の死亡が報告されました。生後2ヶ月を迎えたら速やかにワクチンを接種しましょう。同時に、周囲の人たち(きょうだい)が百日咳にかかったり家に持ち込んだりしないために、ワクチンを追加接種することも勧められます。百日咳ワクチンの追加接種(自費)を年長さん、11歳のDTにかえて接種することを小児科学会は推奨しています。百日咳の詳細は「院長のコラム」(2025年4月)をご参照ください。
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