小児用肺炎球菌ワクチンは、髄膜炎の防止に役だっています。肺炎球菌による髄膜炎の罹患率(5歳未満人口10万人あたり)を過去数年間で比べると、2008~2010年の平均値が2.8人、2011年が2.1人(減少率25%)、2012年が0.8人(減少率71%)です。ワクチンの公費助成が始まった2011年以降、罹患率は着実に減り続けています。ちなみに、ヒブによる髄膜炎の罹患率も同様で、2008~2010年の平均値が7.7人、2011年が3.3人(減少率57%)、2012年が0.6人(減少率92%)です。二種類のワクチンの絶大な効果をご理解いただけると思います。
しかし、現在使われている小児用肺炎球菌ワクチンは、残念ながら無敵ではありません。肺炎球菌は自らを包む莢膜の性質によって93種類に分けられており(血清型といいます)、今のワクチンは7種類の血清型だけに対抗できます。7価のワクチンという意味で「PCV7」とよばれています。93種類の血清型がすべて凶悪という訳ではなく、7種類だけでも重い病状をきたす肺炎球菌感染症の約7割を防ぐことができますが、もっと効果を上げて減少率100%(つまり重症肺炎球菌感染症の撲滅)を目指したいところです。
きたる11月1日に新しい13価のワクチン「PCV13」が発売されます。これまでの7種類の血清型のほかに、さらに6種類の血清型が加わります。これによって、重い病状をきたす肺炎球菌感染症の約9割を防ぐことができます。欧米諸国では3~4年前にPCV7からPCV13への切り替えが済んでおり、その効果と安全性は十分に証明されています。日本でもようやく使用が承認されました。PCV13は定期接種として扱われます。切り替え時の対応法を解説します。
① 初回接種3回がまだ終わっていない子ども
生後2ヶ月になったら、11月1日まで接種を控えることなく、PCV7の接種を始めてください。病気はワクチンが済むまで待ってくれません。初回接種3回の途中で11月1日になれば、以後はPCV13に切り替わります。途中で切り替わっても、新規6種類の免疫はきちんと付きます。
② 初回接種3回がすでに終わっている子ども
1歳の誕生日を迎えたら、3ヶ月以内に追加接種を1回受けてください。11月1日以降はPCV13に切り替わります。1回の接種でも新規6種類の免疫はきちんと付きます。PCV13に切り替わるまで接種を控えることは、あまりお勧めできません(厚生労働省は、平成24年5月1日以降に生まれた子どもは1歳6ヶ月まで遅らせる選択肢もあると言っていますが)。11月1日までにPCV7を4回完了した場合は ③ をご参照ください。
③ 初回接種3回と追加接種1回の計4回が完了している子ども
4回目の接種から8週間以上あけて、生後14ヶ月から59ヶ月の間に、PCV13を1回接種することができます。これを「補助的追加接種」といいます。補助的追加接種に限り、任意接種の扱いです。このあたりが予防接種貧国ニッポンの残念な現状です。有料ではありますが、補助的追加接種を受けることを強くお勧めします。PCV7を完了していても、残り6種類の血清型に対抗する免疫はできていません。1~2歳以降にも肺炎球菌による髄膜炎は起こりえます。わずか1回の接種で身体の守りをさらに固めることができますので、ぜひ(必ず)接種を受けてください。
13価の小児用肺炎球菌ワクチン(PCV13)の最新情報は厚生労働省のホームページにも載っていますので、そちらもご参照ください(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/qa_haienkyuukin.html)。
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